今月のMovie

(2004年 12月号)



「ハウルの動く城」

 脚本・監督   宮崎 駿
音楽      久石 譲
    制作      スタジオジブリ


ソフィー    倍賞 千恵子
ハウル声   木村 拓哉
荒地の魔女  美輪 明宏
カルシファー  我修院 達也


ずっと楽しみにしてきた映画だったので、初日にがんばって観に行ったが、
正直言って、感想となると一言も出てこない・・。
本当に、これ宮崎監督なのか?と思うくらい、今までの路線とはずいぶん離れているように思った。

大好きな「となりのトトロ」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」など、どの作品にも監督の毅然としたポリシーやメッセージが込められていると受け取っていたのに、今回は拍子抜けするくらい何も受け取るものがなかった。
今回は、原作(ダイアナ・ウィン・ジョーンズ「魔法使いハウルと火の悪魔」)があって、それに基づいたストーリーらしいが、
それにしても、まさかいまさらそのメインテーマが、「恋」とか「愛」とかいうのではないだろう。

確かに声優さんたちはよかったし、キムタクも想像以上にハウルをそつなくこなしていたので、それはそれでよかったが、
登場人物たちは、何の脈絡も関連性もないまま突然あらわれ、動き出す。
戦争しているらしいが、何のためにしているのか?
ハウルはどうやって生まれたのか?
ソフィーの本当の家族はなぜ彼女のことを無視しているのか?
サリマンっていい人なの悪い人なの?
荒地の魔女は、なんでソフィーに魔法をかけなきゃいけなかったの?

そして、この映画の重要な鍵であるはず?のハウルとカルシファーの契約って、なんじゃそりゃあ〜。

まあ、そう難しく考えずに、魔法使いのお話なんだからそれでいいのよお〜と言われれば、それまでなのだが、
それにしても、ソフィーの性格はどうしても信じ難い。
呪いをかけた相手を、あんなにすんなり許して、しかも最期まで面倒みるなんて!!
ジブリ作品のヒロインは、凛とした優等生タイプが多いけど、ここまでいい子だと、逆に許せない感じがしてくる。
以前レビューで書いた「スチームボーイ」のヒロイン、スカーレットのように
意地悪さも、冷たさも、優しさも、かわいさも同居していて、ほんとうの女の子のリアル感があって、
気持ち的にも入り込めるけど、
ソフィーには、綺麗さに対するコンプレックスばかりが目立って、逆に共感できない。
ハウルの気持ちが強くなったり弱くなったりするのも、私が期待するような理由からではなくて、
たとえば、「綺麗じゃない」とかいうつまらない理由だったりして、がっかりする。
最期は、「守るべきものができた」とかいうことで、キリリとするのだが。

救いは、美術と音楽。
背景画は、相変わらずすばらしい。空の青さ、草原の美しい緑、西欧的な色調で明るい。
音楽は、久石 譲だから、間違いなく感動できる。

魔法使いのお話の映画としてみるのなら、こんなに豪華な映画はないと思うし、十分に楽しめると思う。